古くて新しい魅力的な寺町空間

 年末年始の買い物客で賑(にぎ)わいをみせる、京都市中京区にある「寺町京極商店街」。幼い頃より慣れ親しんだ商店街の風景も、いろいろ様変わりをみせている。平安京の頃、この寺町通は、平安京の東端を南北に走る道幅32メートルの「東京極大路」であった。しかし、応仁の乱によって整然とした「東京極大路」の大半は荒廃することとなり、その再興を行ったのが、豊臣秀吉天正18(1590)年のことである。

 現在の「寺町通」の通り名は、この頃より誕生し、洛中に点在していた約80の寺院は、秀吉による京都大改造計画の一環として宗派を超えて、東京極大路の東側に移転することとなった。ちなみにこの時、かつての主君であった織田信長を偲(しの)び、本能寺もこの地に再建されることとなった。

 やがて、17世紀後半には、寺院の門前町として、商店街が形成されるに至り、数多くの茶店や料亭、商店の他に、職人の工房などが寺町通に集まることとなる。現在、寺町に残る老舗の多くは、この頃に栄えた名店が代々引き継がれてきたものである。

 明治時代に入ると、西洋菓子店や写真店といった時代を先取りするハイカラな商店が出店するようにもなり、1980年代末頃からは自然光をとりいれながらの大規模なアーケード改修などが実施され、現在の商店街の姿になっているのである。

 写真は、そんな寺町京極商店街に計画中の北欧ジュエリーショップ。以前、京町家であったであろう、アーケードに面した建物の改装計画である。京町家の風情を現代的に再定義し、街路の賑わいを創出するひとつの装置としての機能を内包させた。

 400年間もの長きに渡り少しずつ進化してきた寺町通。古くて新しい魅力的な町並みを、これからも伝え続けてほしいものである。