2012-01-01から1年間の記事一覧

風を奏でる京町家

以前、京都市下京区東洞院仏光寺にある路地奥の町家を改装する機会に恵まれた。クライアントは中学・高校時代の旧友ということもあり、25年以上の長い付き合いである。石畳の残る幅1.3メートル程の小さな路地には、数件の町家が建ち並び、それなりの風情を醸…

祈りを捧げたあの日

旧薩摩藩邸跡にある同志社今出川キャンパスには、五つの重要文化財を含む多くの赤煉瓦(れんが)建築が現存する。明治17(1884)年に建設された彰栄館を最初として、次に建設されたのが、同志社礼拝堂である。明治19(1886)年竣工(しゅんこう)のこの礼拝…

祇園四条にある京町家

深まる秋の京都。観光客で連日にぎわいをみせる東山・祇園町。そんな祇園町にある1件の京町家を、先日、再生する機会に恵まれた。四条花見小路を西に入った四条通南側に面するその京町家は、過去には、喫茶店やギャラリーに使用されていたということもあり、…

堀川京極と下駄履き住宅

京都市上京区にある堀川商店街。現在、堀川通りの西側には、上長者町通りから下立売通りまでアーケードがある。この商店街一帯は昭和初期まで「堀川京極」と呼ばれた300軒以上の商店が軒を連ねる大きな繁華街の一画であった。鉄骨アーチの全蓋(ぜんがい)テ…

岡崎にぎわい創生論

平安神宮や美術館・博物館等をはじめとして、さまざまな文化交流施設が集積し、京都を代表する文化・交流ゾーンである「京都・岡崎」。年間延べ500万人以上の人々が訪れるこの岡崎地域において、現在、中核施設のひとつである京都会館の再整備計画が進められ…

空を感じる京町家

以前、中京蛸薬師にある1軒の京町家を改装する機会に恵まれた。間口5間・奥行き15間ほどの小さな京町家ではあったが、外観は昔の雰囲気が良く残されており上品な佇(たたず)まいを感じさせる町家であった。内部空間は、以前オフィスとして使用されていたとい…

LEDで彩る、秋の延暦寺

今秋、天台宗の総本山・比叡山延暦寺では、11月25(日)まで「秋の夜間特別拝観」が開催されている。延暦7(788)年、伝教大師最澄上人による開創以来、比叡山の美しい自然環境のなかで1200年以上もの長きにわたり、歴史と伝統を現在に伝え続けている。鎌倉…

京都の文化を五感で感じる

先日、四条花見小路下ル、祇園甲部歌舞練場前にある「津田楼」を訪れる機会に恵まれた。 元々はお茶屋であった、歴史のある京町家を改装して、現在は、歴史ある京の文化・日本の文化を五感で感じることのできる施設として、装いも新たに平成22(2010)年にリ…

町家ステイにまつわる法整備

京都市上京区にある京町家ゲストハウス「まくや」。京町家の通り庭の雰囲気を残しつつも、共同洗面スペースとしての再整備をおこなった。 ゲストハウスとは、ユースホステルのように、主にバックパッカーなどの利用を想定した宿泊施設のことであり、京都の他…

守り続ける伝統と美しさ

先日、京都市中京区六角通新町西入にあり、国登録有形文化財でもある「久保家住宅」を訪れた。現在は、京料理店「懐石 瓢樹(ひょうき)」として、この邸宅は大切に使用されている。六角通に面するこの建物は、明治期に日本画会で活躍した今尾景年(いまおけ…

昭和の名庭 余香苑

「妙心寺 退蔵院」内にある、庭園「余香苑」。前号の「京都空間創生術143」でご紹介した、枯山水庭園「元信の庭」と並び、退蔵院を代表するもうひとつの庭園である。 今年のミシュラングリーンガイドジャポンでも、二つ星を獲得したこの庭園は、昭和の小堀遠…

伝統京町家をホットスポットに

先日、京都市下京区仏光寺通柳馬場にある四軒長屋の一画を改装する機会に恵まれた。大正時代に建てられたであろうこの長屋は、建設当時の趣を残す手入れの良く行き届いた京町家であった。この京町家と今回新しくご縁のあったクライアントは、京町家の風情を…

狩野派絵画を庭園にみる

京都市右京区花園にある臨済宗妙心寺派大本山の寺院「妙心寺」。平安の時代よりこの地域には、四季折々に美しい花が咲く花畑が多くあり、いつしか、人々はこの地を「花園」と呼ぶようになった。建武4(1337)年、花園法皇が自らの離宮を、禅寺へと改めたのが…

和紙の持つ、現代的可能性

京都市左京区にある南禅寺。正式名称は「太平興国南禅禅寺(たいへいこうこくなんぜんぜんじ)」といい、1291(正応4)年の開山以来、臨済宗南禅寺派大本山の寺院として、700年以上も、人々の信仰をあつめている。広大な境内には国宝である方丈を中心に、三…

五龍閣にみる和洋折衷の美

先日、東山区清水坂の途中、石畳を奥に入ったところにある「五龍閣」=大正10(1921)年竣工=を訪れた。和洋折衷様式が美しいこの建物は、京都帝国大学建築学科の創設者でもある武田五一の設計による。武田が、建築学科設置と共に京大教授の発令を受けたのは…

宝石箱のような京町家

先日、一軒の京町家を再生する機会に恵まれた。京都市下京区堀川五条下ル東入にある「ふたえ洋菓子店」。京都のよき伝統の雰囲気をそのままに、洋菓子を通じてお届けする、来月オープン予定のケーキショップである。 間口2間半、奥行き3間半、9坪ほどの小さ…

順正書院と新宮凉庭

先日、京都市左京区南禅寺門前にある「南禅寺順正」を訪れる機会に恵まれた。約1200坪の広大な敷地のなかには、国の登録有形文化財にも指定されている「順正書院」の他に数棟からなる端正な和風建築とともに、豊富な山水を使った風情のある庭園が広がってい…

新しくなる京都府立総合資料館

京都市左京区にある「京都府立総合資料館」。周辺には、京都コンサートホールや植物園・京都府立大学といった多くの文化教育施設が集積し、図書館・公文書館・博物館の機能を兼ね備えた総合文化施設として、広く人々に親しまれている。 総合資料館の開館は、…

大切にされ続ける京都の「和」

先日、京都市中京区二条城前にある「京都国際ホテル」を訪れた。昨年2月に新しく改装されたコーナースイートルームは、新しい「和」のイメージを意識した柔らかでぬくもりのある空間に生まれ変わっている。和紙や格子・畳といった「和」の素材をうまく現代の…

モダン和風を竹で彩る

前回でも紹介した、石塀小路の旅館「龍吟(りゅうぎん)」の1階部分にある和食料理店「かみくら」。今月10日にオープン予定の、旬の食材を使用した、雰囲気のある和食割烹(かっぽう)店である。 長さ7.4mのタモの無垢一枚板をカウンターに使用した店内は、…

生きた町家西陣冨田屋

京都市上京区大宮通一条上ルにある「冨田屋(とんだや)」。間口8間の店構えを有する表屋造りの京町家は、平成11(1999)年には文化庁より国の有形登録文化財の指定を受けている。平成19(07)年には京都市からも重要景観建造物の指定も受け、現在は「西陣…

石塀小路におけるこれからの建築空間

京都祇園の奥座敷として、粋人に愛されてきた、京都東山「石塀小路」。石畳の路地沿いに美しい石塀と、和風建築が立ち並び、独特の京都らしい雰囲気を形成している。国の重要伝統建造物保存地区にも指定されている「石塀小路」かいわいは、最近は観光スポッ…

文化の殿堂京都会館

京都市は左京区岡崎にある文化施設「京都会館」の改修計画を発表している。1960年の開館から50年を経て老朽化が進んでいる「京都会館」は、以前よりその再整備については検討され、大学院に在籍していた数年前にも研究室では調査研究が進められていた。 戦後…

新しくなる京都駅八条口

平成25年度に工事着手が予定されている、京都駅八条口の駅前広場リニューアル計画。先日、京都市より現時点での設計素案である、「京都駅南口広場整備計画(案)」が手元に届いた。 京都駅南口として、イオンモールKYOTO、京都アバンティ、新・都ホテルをは…

大和大路を彩る、古都の風情

京都市東山区にある「大和大路」通。三条通から泉涌寺(せんにゅうじ)通まで南北に伸びる大和大路通は、かつては奈良へと通じる大和街道の一部にあたり、南へ進むと、その先は本町通・伏見街道へとつながっている。四条通以北は特に「縄手」通とよばれてい…

現代と融合した和空間

先日、京都嵐山・保津川峡谷にある和風旅館「星のや 京都」を訪れる機会に恵まれた。 紅葉の名所として知られていた明治期創業の老舗旅館「嵐峡館」をリニューアルし09年12月に開業した、京都の良さを肌で感じることのできる宿泊施設である。四季折々の嵐峡…

あぶり餅とまいまい井戸

京都市北区紫野にある今宮神社。平安遷都以前より、この地には古くから社があり、現在も技芸上達を願う人々の崇敬があつく、織物の祖神としても信仰を集めている。神社の東参道沿いにあぶり餅「一文字屋和輔(一和)」がある。一口サイズの餅を炭火であぶり…

想いを紡ぐ名建築

京都帝国大(現・京都大)に工学部建築学科を創立し、”関西建築界の父”ともいわれる近代建築の巨匠、武田五一。国会議事堂の設計監修をはじめ、ここ京都においても、京都市役所・京都府立図書館・同志社女子大学ジェームス館、栄光館・五龍閣・1928ビル(旧…

遍照寺の灯籠流し

京都市右京区嵯峨広沢町にある「広沢池(ひろさわのいけ)」。全周約1.3km、東西南北それぞれ約300mの大きさを持ち、日本三沢のひとつにも数えられるこの「広沢池」では毎年8月16日になると、お盆の精霊送りの行事として「灯籠(とうろう)流し」がおこなわ…

路地空間の現代的可能性

京都に無数に点在する路地空間。正確なその数は定かではないが、一説によると京都市内における路地の数は約2000ヵ所にもおよぶといわれている。にぎやかな表通りから、一歩、路地空間へ足を踏み入れると、そこには、京都の人々の暮らしが息づいている。約一…