2013-01-01から1年間の記事一覧

夢窓国師が夢見た風景

京都市右京区にある嵯峨嵐山「天龍寺」。臨済宗天龍寺派の大本山であり、平成6(1994)年には、「古都京都の文化財」のひとつとして、世界遺産にも登録されている。足利将軍家と桓武天皇ゆかりの禅寺として壮大な規模と高い格式を誇り、京都五山の第1位に格…

広大な美の空間 清流亭

京都市左京区にある南禅寺三門。その北西部にあたる広大な地域一帯は明治維新まで、南禅寺塔頭(たっちゅう)があった場所である。明治維新以降は別荘地として人気となり、有力者たちが山荘を建設することとなった。平成の現在でも「野村別邸(碧雲荘)」をは…

猫と共に暮らす京町家

以前、上京区に位置する、路地奥のとある京町家空間を改装する機会に恵まれた。ご結婚を機に新生活を始められる、ご夫婦のための改装プロジェクトであった。 間口3間足らず、奥行き5間ほどの小さな仕舞屋(しもたや)のつくりではあったが、昔の雰囲気をそ…

築330年の京町家

17世紀の半ばから、18世紀の始めにかけて上方と呼ばれる京都、大阪を中心に発展を遂げた元禄文化。江戸幕府五代将軍・綱吉の時代に、鎖国政策や幕藩体制の安定もあり、町人を中心に日本独自の美しい洗練された文化が華開いた時代でもあった。井原西鶴や松尾…

優しさと柔らかさのある和空間

京都市東山区祇園町にある祇園甲部歌舞練場。現在、春の訪れとともに「都をどり」が開催され、石畳が美しい花見小路通は連日、多くの観光客でにぎわいをみせている。先日、そんな歌舞練場の向かいに位置する「SAYURA VINS FINS」という、一軒のお茶屋を改装…

街路に映す和の潜在力

京都東山五条大橋のたもとに位置する「京居酒屋 Sherry」。清水寺にもほど近く、交通量の多い五条通(国道1号線)にも面した、幹線道路沿いのロケーションに計画された、京居酒屋のプロジェクトである。 和傘の伝統技術を生かしながら生産された、大きな提灯…

"Cafe"と"旅館"の素敵な関係性

先日、京都市中京区三条御幸町下ルにある「cinq cafe(サンクカフェ)」を訪れる機会に恵まれた。フランス語で「五つのカフェ」を意味するこのモダンなカフェの2階には、同じように「五つの可愛い部屋」を意味する「cinq petit chambre(サンクプチシャンブ…

美しい環境配慮住宅

大山崎町にある「聴竹居(ちょうちくきょ)」。天王山の麓(ふもと)に今も創建 時の佇(たたず)まいをそのまま残すこの木造住宅は、昭和3(1928)年に建てられた、建築家の故藤井厚二の実験住宅である。和と洋が見事に調和した室内空間は築後82年を経た現在も…

糺の森の式年遷宮

京都市左京区にある「糺(ただす)の森」は、下鴨神社(賀茂御祖神社)のご神域に広がる森である。広さは約12万4000平方メートル(約3万6000坪)東京ドームの約3倍にも及び、平成6(1994)年にはユネスコの世界文化遺産にも登録されている。その歴史は古く太…

技と心をつなぐ一枚板

以前、東山区知恩院門前にほど近い「祇園えもん」という和食料理店を改装する機会に恵まれた。聞けば、27年前の創業以来、包丁一つでこだわりの寿司(すし)を握り続けてこられたご主人が、後継者であるご子息と一緒に新しい寿司海鮮料理店をリニューアルオ…

新島襄と八重が愛した住宅

京都市上京区寺町通丸太町上ルにある「新島旧邸」。今年のNHK大河ドラマ「八重の桜」の主人公、新島八重と、その夫で同志社創立者・新島襄が昭和7(1932)年まで暮らした私邸である。この「新島旧邸」は明治11(1878)年に建造され、今年で築135年を迎える。…

小さな町家の大きな通り土間

以前、中京区車屋町押小路上ルに新しくオープンした、ドーナツカフェ「nicotto & mam」。個性的なその店名は、にこやかに笑う「にこっと」と母親をイメージする「mam」からの造語に由来するものだそうである。 間口2間半(約4.5メートル)、奥行き4間ほどの…

観光地にある観光トイレ

先日、京都市右京区「妙心寺 退蔵院」内にある、京都市「観光トイレ」の再整備を行う機会に恵まれた。現在、京都市内にある合計113ヵ所ある公衆トイレのうち、寺院の境内の内にある公衆トイレは特に「観光トイレ」と呼ばれ、妙心寺の他に、金閣寺、 仁和寺、…

夢を与える能舞台

上京区にある「河村能舞台」。この舞台のある烏丸上立売界隈(かいわい)は、室町幕府の三代将軍足利義満が造った「花の御所」の北端にあたるといわれている。現在の烏丸通・今出川通・上立売通・室町通に囲まれた東西1町(120メートル)・南北2町(240メー…

鞍馬の自然と向き合う住宅

牛若丸と天狗(てんぐ)の伝説が残る京都市左京区・鞍馬。先日、鞍馬本町にある一軒の住宅を改装する機会に恵まれた。鞍馬街道沿いにあるその住宅は、木の芽煮の伝統の味を現在に伝える「くらま辻井」という屋号で、古くより商いを営んでいる建物でもある。…

美しい史跡「水路閣」

1869(明治2)年の東京遷都以来、経済も人口も衰退していく京都において、その活力を呼び戻すため、第3代京都府知事、北垣国道の発意により始められた琵琶湖疏水事業。1885(同18)年に起工されたこの事業は、当時125万6000円というの巨額の工事費をかけ、18…

旧明倫小学校にある談話室

京都市中京区錦小路室町上ルにある、「旧明倫小学校」。江戸時代、石門心学の講舎であった「明倫舎」の跡地に下京第三番組小学校(後の京都市立明倫小学校)が開校したのは、1869(明治2)年のことである。現在、「京都芸術センター」として活用されている鉄…

流れづくりの流線美

古来より淀川・鴨川の水源の地・水の神様として崇敬を集める、京都市左京区の貴船神社。現在もなお、全国の料理業や調理業・水を取り扱う商売の人々から信仰を集めている。 貴船神社の歴史は古く、その創建は今から約1600年前。仁徳天皇の第三皇子、第十八代…

新風館パタゴニアにみる環境改装思想

中京区三条烏丸にある複合商業施設「新風館」(旧・京都中央電話局)。れんが造りの外観と烏丸通への連続アーチが印象的なこの建物は、逓信省の京都中央電話局として、大正15(1926)年に建設されたモダニズム建築である。設計は、逓信建築の先駆者のひとり…

祇園会館のタイル壁画

京都市東山区の祇園石段下にある「祇園会館」。圓堂政嘉の設計により、1958(昭和33)年3月に完成し、今年で55年目を迎える。毎年、11月には祇園東の芸舞妓(げいまいこ)さんたちにより「祇園をどり」が会館で催され、秋の京都に彩りを添えている。普段は、…