現代住宅と京町家

 先日、京都西陣にある、路地奥の住宅を改装する機会に恵まれた。昭和50年ごろに建設された木造2階建て住宅。吹き付け仕上げの外観にアルミサッシが取り付けられた、当時としてはごく一般的な分譲住宅であったと想像される。
 
 「一文庵」と名付けられたこの住宅は、よく手入れが行き届いており、住まいに対するクライアントの姿勢が手に取るようにわかった。今回、住宅を改装するにあたり、クライアントご夫婦は京都らしい風情を醸し出す、京町家風の外観への改装を希望されていた。
 
 町家再生を数多く手掛けている私たちにとっても、町家の修復は手慣れていたが、今回のように戦後の標準的な住宅を町家に改装することは初めての取り組みで、当初より多くの工夫をとり入れながらのプロジェクトとなった。
 
 先人の知恵が蓄積された「京町家」と、戦後、効率を優先して建設された「現代住宅」では、同じ木造住宅でありながら、その考え方や工法は大きく異なっている。京都の伝統的なエッセンスを現代に如何にとりいれながら、快適な住宅環境を再構成するか?このことは私たちにとって課せられた一つの命題でもあった。
 
 べんがら格子や木製窓、一文字瓦、漆喰(しっくい)や聚楽といった京町家に欠かせない要素を随所にとりいれ、町並みに溶け込むよう、落ち着いた外観を計画した。内部空間は、ガラス瓦を介して柔らかな自然光を効果的に取り込むことのできる計画とし、京町家の良さを現代の住宅に投影する仕組みを形成した。
 
 落ちつきのある京都らしい外観は、町並みを美しくする。昨今の景観政策のありかたを、今一度考えさせられる、意義のある改修事例であった。