カフェが育む芸術空間

 京都市中京区錦小路室町上ルにある「京都芸術文化センター」。元は1869(明治2)年に下京第三番組小学校として開設された、明倫小学校。1931(昭和6)年に建設された旧校舎を改修・再生して、2000(平成12)年より京都の芸術文化発信の拠点として現在まで使用されている。館内では、絵画・演劇・ダンスなどの幅広い活動が日々活発に行なわれ、若きアーティスト達の創作活動・発表の場となっている。 
 
 先日、そんな京都芸術文化センター内にある「前田珈琲 明倫店」を訪れた。以前は、小学校1年生用の教室として使用されていたという、カフェスペースは、居心地もよく懐かしい気分になる。聞けば、00年の芸術センター開館以来、喫茶の持つ本当の良さをこの場所で伝え続けているという。 
 
 高い天井を見上げると、丁寧な装飾が施された大きな白い梁(はり)が印象的である。梁の端部を斜めに折り下げ強度を増したスタイルは"垂直ハンチ"と呼ばれ、昔の建物によく見られる設計手法であるが、むしろそれが目新しい。また、床材には天然木のナラフローリングが使用され使い込むほどに味わいのあるしつらえとなっている。椅子やテーブルに至るまで、和洋折衷様式を意識した、レトロなスタイルでまとめられ、老若男女を問わず愉しむことのできる安らぎとぬくもりの空間を創出している。 
 
 計画当初は、自動販売機スペースとして計画されていた、一年生の教室空間。文化と芸術がふれあい、新しい歴史が育まれる中で、一杯の珈琲と、そのスペースが持つ意味性を感じることのできたひとときであった。