石塀小路におけるこれからの建築空間

 京都祇園奥座敷として、粋人に愛されてきた、京都東山「石塀小路」。石畳の路地沿いに美しい石塀と、和風建築が立ち並び、独特の京都らしい雰囲気を形成している。国の重要伝統建造物保存地区にも指定されている「石塀小路」かいわいは、最近は観光スポットとしても注目を集め、さまざまな飲食店や宿泊施設も新しくオープンしている。
 そんな石塀小路の一角に、先日、新しい旅の宿「石塀小路 龍吟(りゅうぎん)」が完成した。完成見学会には200人を超える多くの人々の来訪があり、、石塀小路における新しい建物への関心の高さをうかがい知ることができた。
 石塀にかこまれて高台となっている敷地の特性を生かしながら、半地下部分に鉄筋コンクリート造の和食かっぽう店を計画し、その上に木造2階建ての旅館を建設するという大胆なアイデアは、石塀小路内においては初めての試みである。計画当初より関係行政庁との協議を綿密に重ねた結果、新しいスタイルの空間が実現することとなった。
 外観は全体的に和風を基調とし、石塀小路にふさわしく軒のラインを美しく見せる伝統的なデザイン。格子や円形の下地窓をアクセントに使用しながら、落ち着いたたたずまいとなるよう配慮した。軒裏や窓も木製で仕上げることにより、京町家のようなぬくもりを肌で感じる旅館の雰囲気を作りあげることができた。
 重要伝統建造物保存地区という厳しい規制がかかるこの「石塀小路」地域において、ひとつの現代的建築提案が行えたことは、非常にいい経験となったと同時に、これからの石塀小路のありかたを深く考えさせられた、印象的なプロジェクトであった。