路地空間の現代的可能性

 京都に無数に点在する路地空間。正確なその数は定かではないが、一説によると京都市内における路地の数は約2000ヵ所にもおよぶといわれている。にぎやかな表通りから、一歩、路地空間へ足を踏み入れると、そこには、京都の人々の暮らしが息づいている。約一間狭い道幅が、その地域特有のコミニティを育み、さまざまな人間模様を映し出す装置として機能している。
 
 ところで、現在の建築基準法においては、一部の例外規定はあるものの、道幅の狭い路地における建築物の建て替えは、原則禁止されている。法律が制定される昭和25年以前においては比較的自由に新築ができたのであるが、現在は、消防活動が満足にできない等の理由から、新しく建物を建築することは大きく制限されている。したがって、現在の法律が改正されない限り、路地にある古い建物は、リフォームしながら使い続けられることになる。
 
 ここで、旧市街地を中心に無数に点在する路地をひとつの空間資源として考えたとき、そこには膨大な量のスペースが存在していることとなる。私たちが提唱する「スペースリサイクル」もこの観点から日々、研究を重ねている。すなわち、京都における都市の空間資源をいかに再活用するかを真剣に考えることが、京都の都市格の向上における大事な要素であると思うのである。
 
 川端御池にあるフレンチレストラン「Relais Verdun (ルレ ヴェルダン) 」は、路地奥にある古い建物をエレガントにリニューアルした改装事例である。さまざまな路地空間の活用事例を積み重ねながら、次世代につなげることのできる京都スタイルの構築が、これから大切であると思うのである。