和紙の持つ、現代的可能性

 京都市左京区にある南禅寺。正式名称は「太平興国南禅禅寺(たいへいこうこくなんぜんぜんじ)」といい、1291(正応4)年の開山以来、臨済宗南禅寺派大本山の寺院として、700年以上も、人々の信仰をあつめている。広大な境内には国宝である方丈を中心に、三門や数多くの別院・塔頭があり、更には、1890(明治23)年に古代ローマの水道橋を手本にレンガ造りで建造された「琵琶湖疎水 水路閣」も存在する。

 先日、そんな南禅寺の門前に京土産店を設計する機会に恵まれた。「観門亭」と名付けられた京土産店の内部には、伝統工芸品から食品に至るまで、さまざまな京都の銘品が数多く取りそろえられている。全国より南禅寺を訪れる観光客のために、ディスプレーにも工夫をこらし、雅(みやび)の世界を現代的に感じることのできるぬくもりのある空間が演出されている。

 端正な瓦ぶき平屋建ての外観から、一歩店内に足を踏み入れると、色鮮やかな数個の大きなペンダント照明が設置されている。京和傘の伝統技術と構造を活かして開発されたこの照明は、和紙の持つ暖かさを現代的にデザインし、シンプルでやわらかな光を放っている。また、什器(じゅうき)ディスプレーには和紙である京唐紙を効果的に使用している。京唐紙のもつ独特のきらめきを間接照明やスポットライトで照らしだし、幻想的な空間の構築を目指した。

 色とりどりの、京土産を引き立たせるディスプレー計画が、京土産店には必要不可欠である。古都・京都の雅の世界を25坪の店内空間でいかに表現し、演出するか。和紙の持つ現代的可能性に触れながら、魅力的な店舗空間を実現することのできたプロジェクトであった。