町家ステイにまつわる法整備

 京都市上京区にある京町家ゲストハウス「まくや」。京町家の通り庭の雰囲気を残しつつも、共同洗面スペースとしての再整備をおこなった。

 ゲストハウスとは、ユースホステルのように、主にバックパッカーなどの利用を想定した宿泊施設のことであり、京都の他にも北海道や沖縄県でも人気のある施設である。基本的にキッチンやトイレ、シャワールームなどは共同で使用し、ドミトリー(相部屋)で宿泊するスタイルが一般的である。さらに、サロンなどの共同スペースで他の人々と交流や出会いがあることもゲストハウスの大きな特徴であり、そのことが旅の楽しさを増加させ、旅行者には人気の「宿」となっている。

 ところで、京町家をこのような宿泊施設に転用するにあたっては、ひとつの大きな法律上の制約に直面することになる。通常、宿泊施設を営業するにあたっては、旅館業法に基づき、都道府県知事の営業許可を受けなければならない。ゲストハウスは旅館業法上「簡易宿所」と呼ばれ、各寝室の面積や、必要な施設についてある一定の基準が定められている。

 一方、建築基準法においては、ゲストハウスは「ホテル・旅館」であると解釈されており、ある一定規模の改装においては、住宅から「ホテル・旅館」への用途を変更するにあたり、建築確認許可を受けなければならない。旅館業法上の営業許可を取得するには、その前提条件として建築確認許可を受けなければならず、このことが、京町家を宿泊施設に改装する際に大きな障壁となっている事実がある。

 そもそも、現行の法制度にあっては、このように京町家を宿泊施設に改装することが想定されていない。国際観光都市・京都のために一刻も早い法制度の再整備を願いたいものである。