LEDで彩る、秋の延暦寺

 今秋、天台宗の総本山・比叡山延暦寺では、11月25(日)まで「秋の夜間特別拝観」が開催されている。延暦7(788)年、伝教大師最澄上人による開創以来、比叡山の美しい自然環境のなかで1200年以上もの長きにわたり、歴史と伝統を現在に伝え続けている。鎌倉時代以降においては、法然上人や親鸞聖人、日蓮聖人をはじめとする、多くの日本仏教各宗の祖師方を育み、日本仏教の母山として古来より人々の信仰をあつめている。平成6(1994)年には、ユネスコ世界文化遺産にも登録され、世界的にもその価値が評価されている。

 先日、そんな比叡山延暦寺の「夜間特別拝観」に訪れる機会に恵まれた。比叡山の山上から東麓(とうろく)にかけた広大な境内には、本尊である薬師如来を祭る国宝・総本堂「根本中堂」をはじめ、大講堂=写真=や鐘楼など、数多くの堂塔が点在している。延暦寺の境内は大きく分けて、東塔(とうどう)、西塔(さいとう)、横川(よかわ)の三つの地域に分けられており、今回、東塔地区一帯においてライトアップによる夜間特別拝観が行われている。

 消費電力を抑え、環境にも優しいLED(発光ダイオード)照明によるライトアップで紅葉シーズンを迎えた境内が色鮮やかに演出されている。通常の白色光に加え、青色光や赤色光を巧みに照射しながら、紅葉していく木々とともに、密教寺院にふさわしく幻想的な雰囲気が醸し出されてる。「根本中堂」においては、内部の拝観をすることもでき、創建以来、1200年以上、延々と灯(とも)り続ける不滅の法灯とともに、本尊の薬師如来像も公開されている。秋の夜長の延暦寺。比叡の山中にありながら、歴史ロマンを肌で感じることのできたひとときであった。