新風館パタゴニアにみる環境改装思想

 中京区三条烏丸にある複合商業施設「新風館」(旧・京都中央電話局)。れんが造りの外観と烏丸通への連続アーチが印象的なこの建物は、逓信省の京都中央電話局として、大正15(1926)年に建設されたモダニズム建築である。設計は、逓信建築の先駆者のひとり、吉田鉄郎。その歴史的価値の高さから、昭和58(1983)年に京都市登録有形文化財の第1号にも指定され、平成13(2001)年から商業施設「新風館」として生まれ変わった。

 先日、そんな「新風館」に一軒の新しい店舗が誕生した。環境問題に積極的に取り組み、環境に配慮した衣料品・アウトドア用品等を幅広く販売する「パタゴニア京都」である。アメリカに本社を置く「パタゴニア」としては、国内19店舗目の直営店舗であり、約130坪のフロア内には、ユーズド家具をうまく活用したコミニティースペースも整備されている。今回の改装においては、企業コンセプトをそのままに、歴史ある建物をそのまま活用し、価値を継承しながら、環境に与えるインパクトを最小限に抑える改装計画がなされている。

 例えば、建具や建具枠には杉の間伐材が、レジカウンターの家具材には、古民家解体の際に出た柱材が、それぞれ使用され、本来廃棄される部分であった木材がうまく活用されている。コミュニティースペースに目を移すと、床材には桧(ひのき)の間伐材が、本棚には焼却炉で使用されていたれんががカットされ、巧みに工夫して再利用されている。その他にも、塗料は水性塗料・照明はLED照明・水栓は節水型水栓が全て使用され、同社の意識の高さがうかがえる。

 既存の建物に環境面での改善を施し、廃棄物の発生を最小限に抑えながら修復して再利用する。そんな最先端の改装思想を肌で感じることのできた、リニューアルプロジェクトであった。