祇園会館のタイル壁画

 京都市東山区祇園石段下にある「祇園会館」。圓堂政嘉の設計により、1958(昭和33)年3月に完成し、今年で55年目を迎える。毎年、11月には祇園東の芸舞妓(げいまいこ)さんたちにより「祇園をどり」が会館で催され、秋の京都に彩りを添えている。普段は、約500名収容の映画館として、映画を上映しているのであるが、歌舞練場としての機能も持ち合わせているため、客席部分に「花道」がある珍しいスタイルとなっている。

 竣工(しゅんこう)当初は3階建てであったが、後年4階部分が増築され、現在は、演劇場の他にも飲食店等も入居する複合商業施設となっている。増床された4階部分には、ボウリング場やディスコがあったこともあり、記憶に残っている読者の方も多いのではなかろうか。

 度重なる改装が行われた会館ではあるが、現在も昭和33年の建築当時の雰囲気をそのまま残しているのが、正面を飾る縦8メートル、横18メートルの巨大なタイル壁画である。歌舞伎・阿国三山をテーマに構成したこのデザインは、大正から昭和にかけて活躍した建築家・中村順平によるもの。最愛の人・三山との離別を乗り越え、歓喜も悲哀も慟哭(どうこく)も、すべてを込めて踊る阿国の姿は「建築は芸術である」という彼の信念を形であらわした、中村順平の代表作でもある。

 ここに「祇園會舘 竣工記念」と冠された一冊のパンフレットがある。「藝能殿堂 竣工を祝して」というタイトルで、52年前の京都市長、高山義三はこう述べる。「すべての点でもっとも誇り得る会館であることは、国際歴史観光都市京都の観光施設充実の面からみてよろこびに堪えない。」と。今後の京都にとって、その活用に期待のかかる近代建築である。