旧明倫小学校にある談話室

 京都市中京区錦小路室町上ルにある、「旧明倫小学校」。江戸時代、石門心学の講舎であった「明倫舎」の跡地に下京第三番組小学校(後の京都市立明倫小学校)が開校したのは、1869(明治2)年のことである。現在、「京都芸術センター」として活用されている鉄筋コンクリート造3階建ての本館は、1931(昭和6)年の建造であり、1993(平成5)年の閉校まで、約62年間、小学校の校舎として大切に使用されてきた。

 99(平成11)年には総工費、約9億8000万円を投じて、耐震改修が行われ、翌年の2000(平成12)年より、京都市・芸術家その他芸術に関する活動を行う者が連携しながら、京都市における芸術の総合的な振興を目指して「京都芸術センター」が開設されている。

 先日、そんな「京都芸術センター」を訪れた際、2階にある「談話室」に案内された。一歩、足を踏み入れると、昔懐かしい木のフローリング材のうえに丁寧にワックス掛けされた「油引(あぶらび)き」の香りが室内に広がっている。懐かしい香りとともに、楽しかった小学校時代の記憶がよみがえる。思えば小学校時代、土足で傷みやすい床のメンテナンスのために、年に数回バケツに入った黒い液体ワックスをモップで床に引き、ふざけて滑りながらよく遊んだものである。

 室内には、当時の黒板や、教員用の教壇、児童用の机や椅子がそのまま残されており、まるで昔に戻ったかのような、懐かしい空間が広がっている。普段、あまり気付くことのない空間と香りの関係性。新しい発見をすることのできた「談話室」での空間体験であった。