モダン和風を竹で彩る

前回でも紹介した、石塀小路の旅館「龍吟(りゅうぎん)」の1階部分にある和食料理店「かみくら」。今月10日にオープン予定の、旬の食材を使用した、雰囲気のある和食割烹(かっぽう)店である。
 長さ7.4mのタモの無垢一枚板をカウンターに使用した店内は、全体をモダン和風でデザインし、古都の風情を楽しめる空間としてまとめあげられている。
 「かみくら」の御影(みかげ)石張りの床と対比するように、天井や壁、建具や格子にまで孟宗(もうそう)竹を使用することにより、繊細かつ上品な室内空間を構築することが可能となった。普段、建築仕上げ材に使われることが少ない竹材。こうしてさまざまな用途に使用してみると改めて「竹」のもつその効能に気付くこととなる。
 ひとつは、その柔軟さと強靱(きょうじん)性である。竹かご等の工芸品に象徴されるように、比較的加工が容易で、しなやかであるにも関わらず、強い耐久性を持ち合わせている。このことから、従来の木材ではなし得なかった、細い格子や桟の製作が可能となり、結果として美しいデザインが可能となった。また、伸縮性が低いことも大きな特徴である。物差しが竹で製作されていたことからもわかるように、竹は経年変化による伸縮が非常に少なく、ひずみがない。そのような竹の特徴は、店舗設計の可能性を大きく広げることとなる。
 さらに、飲食店舗においては、竹の持つ抗菌作用も役に立つ。昔の旅人は、その抗菌作用に着目し、竹の皮でおむすびを包み、竹筒を水筒代わりに使用していたのである。
 和のデザインともうまく調和する「竹」の特徴。今後に大きな可能性を残す、店舗空間事例となった。