昭和の名庭 余香苑

「妙心寺 退蔵院」内にある、庭園「余香苑」。前号の「京都空間創生術143」でご紹介した、枯山水庭園「元信の庭」と並び、退蔵院を代表するもうひとつの庭園である。 今年のミシュラングリーンガイドジャポンでも、二つ星を獲得したこの庭園は、昭和の小堀遠…

伝統京町家をホットスポットに

先日、京都市下京区仏光寺通柳馬場にある四軒長屋の一画を改装する機会に恵まれた。大正時代に建てられたであろうこの長屋は、建設当時の趣を残す手入れの良く行き届いた京町家であった。この京町家と今回新しくご縁のあったクライアントは、京町家の風情を…

狩野派絵画を庭園にみる

京都市右京区花園にある臨済宗妙心寺派大本山の寺院「妙心寺」。平安の時代よりこの地域には、四季折々に美しい花が咲く花畑が多くあり、いつしか、人々はこの地を「花園」と呼ぶようになった。建武4(1337)年、花園法皇が自らの離宮を、禅寺へと改めたのが…

和紙の持つ、現代的可能性

京都市左京区にある南禅寺。正式名称は「太平興国南禅禅寺(たいへいこうこくなんぜんぜんじ)」といい、1291(正応4)年の開山以来、臨済宗南禅寺派大本山の寺院として、700年以上も、人々の信仰をあつめている。広大な境内には国宝である方丈を中心に、三…

五龍閣にみる和洋折衷の美

先日、東山区清水坂の途中、石畳を奥に入ったところにある「五龍閣」=大正10(1921)年竣工=を訪れた。和洋折衷様式が美しいこの建物は、京都帝国大学建築学科の創設者でもある武田五一の設計による。武田が、建築学科設置と共に京大教授の発令を受けたのは…

宝石箱のような京町家

先日、一軒の京町家を再生する機会に恵まれた。京都市下京区堀川五条下ル東入にある「ふたえ洋菓子店」。京都のよき伝統の雰囲気をそのままに、洋菓子を通じてお届けする、来月オープン予定のケーキショップである。 間口2間半、奥行き3間半、9坪ほどの小さ…

順正書院と新宮凉庭

先日、京都市左京区南禅寺門前にある「南禅寺順正」を訪れる機会に恵まれた。約1200坪の広大な敷地のなかには、国の登録有形文化財にも指定されている「順正書院」の他に数棟からなる端正な和風建築とともに、豊富な山水を使った風情のある庭園が広がってい…

新しくなる京都府立総合資料館

京都市左京区にある「京都府立総合資料館」。周辺には、京都コンサートホールや植物園・京都府立大学といった多くの文化教育施設が集積し、図書館・公文書館・博物館の機能を兼ね備えた総合文化施設として、広く人々に親しまれている。 総合資料館の開館は、…

大切にされ続ける京都の「和」

先日、京都市中京区二条城前にある「京都国際ホテル」を訪れた。昨年2月に新しく改装されたコーナースイートルームは、新しい「和」のイメージを意識した柔らかでぬくもりのある空間に生まれ変わっている。和紙や格子・畳といった「和」の素材をうまく現代の…

モダン和風を竹で彩る

前回でも紹介した、石塀小路の旅館「龍吟(りゅうぎん)」の1階部分にある和食料理店「かみくら」。今月10日にオープン予定の、旬の食材を使用した、雰囲気のある和食割烹(かっぽう)店である。 長さ7.4mのタモの無垢一枚板をカウンターに使用した店内は、…

生きた町家西陣冨田屋

京都市上京区大宮通一条上ルにある「冨田屋(とんだや)」。間口8間の店構えを有する表屋造りの京町家は、平成11(1999)年には文化庁より国の有形登録文化財の指定を受けている。平成19(07)年には京都市からも重要景観建造物の指定も受け、現在は「西陣…

石塀小路におけるこれからの建築空間

京都祇園の奥座敷として、粋人に愛されてきた、京都東山「石塀小路」。石畳の路地沿いに美しい石塀と、和風建築が立ち並び、独特の京都らしい雰囲気を形成している。国の重要伝統建造物保存地区にも指定されている「石塀小路」かいわいは、最近は観光スポッ…

文化の殿堂京都会館

京都市は左京区岡崎にある文化施設「京都会館」の改修計画を発表している。1960年の開館から50年を経て老朽化が進んでいる「京都会館」は、以前よりその再整備については検討され、大学院に在籍していた数年前にも研究室では調査研究が進められていた。 戦後…

新しくなる京都駅八条口

平成25年度に工事着手が予定されている、京都駅八条口の駅前広場リニューアル計画。先日、京都市より現時点での設計素案である、「京都駅南口広場整備計画(案)」が手元に届いた。 京都駅南口として、イオンモールKYOTO、京都アバンティ、新・都ホテルをは…

大和大路を彩る、古都の風情

京都市東山区にある「大和大路」通。三条通から泉涌寺(せんにゅうじ)通まで南北に伸びる大和大路通は、かつては奈良へと通じる大和街道の一部にあたり、南へ進むと、その先は本町通・伏見街道へとつながっている。四条通以北は特に「縄手」通とよばれてい…

現代と融合した和空間

先日、京都嵐山・保津川峡谷にある和風旅館「星のや 京都」を訪れる機会に恵まれた。 紅葉の名所として知られていた明治期創業の老舗旅館「嵐峡館」をリニューアルし09年12月に開業した、京都の良さを肌で感じることのできる宿泊施設である。四季折々の嵐峡…

あぶり餅とまいまい井戸

京都市北区紫野にある今宮神社。平安遷都以前より、この地には古くから社があり、現在も技芸上達を願う人々の崇敬があつく、織物の祖神としても信仰を集めている。神社の東参道沿いにあぶり餅「一文字屋和輔(一和)」がある。一口サイズの餅を炭火であぶり…

想いを紡ぐ名建築

京都帝国大(現・京都大)に工学部建築学科を創立し、”関西建築界の父”ともいわれる近代建築の巨匠、武田五一。国会議事堂の設計監修をはじめ、ここ京都においても、京都市役所・京都府立図書館・同志社女子大学ジェームス館、栄光館・五龍閣・1928ビル(旧…

遍照寺の灯籠流し

京都市右京区嵯峨広沢町にある「広沢池(ひろさわのいけ)」。全周約1.3km、東西南北それぞれ約300mの大きさを持ち、日本三沢のひとつにも数えられるこの「広沢池」では毎年8月16日になると、お盆の精霊送りの行事として「灯籠(とうろう)流し」がおこなわ…

路地空間の現代的可能性

京都に無数に点在する路地空間。正確なその数は定かではないが、一説によると京都市内における路地の数は約2000ヵ所にもおよぶといわれている。にぎやかな表通りから、一歩、路地空間へ足を踏み入れると、そこには、京都の人々の暮らしが息づいている。約一…

住まいと庭のいい関係

先日、上京区室町丸太町にある、京町家の改修工事を行った。昭和初期に邸宅として建てられたであろうこの京町家は、以前より企業の研修施設として長年に渡り大切に使用され続けていた。約270坪の敷地に建てられた、木造2階建ての母屋はちょうど中庭を中心に…

魯山人が愛した縁側空間

陶芸や書、絵画などで才能を開花させ、同時に美食家としても知られる、北大路魯山人。明治16(1883)年上賀茂に生まれた魯山人は、中京区にある梅屋尋常小学校を卒業後、「自然美礼讃一辺倒」を信条に、生涯をかけ美を追究した20世紀の芸術家であった。そん…

重要文化財 瀧澤家住宅

義経伝説でも有名な京都市左京区「鞍馬」。古来より、鞍馬は丹波や若狭と京都との間の物資の中継点としても発展を遂げ、街道沿いには、山間の良質な薪炭などを扱う問屋等も軒を連ねていた。付近一帯には市中と変わらない形式の町家が多く立ち並び、情緒ある…

京都におけるBook&Cafeの新潮流

首都圏を中心に近年多く見られる「Book&Cafe」スタイルの書籍店。書籍売り場と併設して喫茶スペースを設けることにより、くつろぎながら、読書を楽しむことのできる空間として、最近、全国的に広がりを見せつつある。 京都においても、今月5日、”学生の街”左…

京町家と北欧ジュエリーの素敵な関係

京都市・寺町京極商店街にある北欧ジュエリーショップ「Melumo putiikki」(メルモプティッキ)。もともとは、京町家であったであろう、アーケードに面した建物の改装事例である。 いろいろな改装における工夫を取り入れながら、先日無事にオープンの運びとな…

京都水族館にみる環境共棲技術

3月14日、下京区の梅小路公園内にかねてより、オリックス不動産によって計画が進められていた「京都水族館」が開館した。内陸型大規模水族館としては、国内最大規模の水族館であり、建設費は約60億円、展示総水量は約3000トンにもおよぶ。延べ約3320坪(1100…

粟田口に息づく合掌造り

ユネスコの世界遺産にも登録されている「越中・五箇山の合掌造り」。豪雪地域に適応するために急勾配の屋根を持ち、その屋根裏スペースの有効活用が特徴的な古民家として、現在も多くの観光客でにぎわっている。私自身、小学校3年生の夏休みに、五箇山の合掌…

カフェが育む芸術空間

京都市中京区錦小路室町上ルにある「京都芸術文化センター」。元は1869(明治2)年に下京第三番組小学校として開設された、明倫小学校。1931(昭和6)年に建設された旧校舎を改修・再生して、2000(平成12)年より京都の芸術文化発信の拠点として現在まで使…

未確定メルマガのお知らせ

i7kmo65flf@d.hatena.ne.jp様こんにちは、メルモです。仮登録を行ったメルマガ 1誌がまだ確定されていません。 登録される場合は以下のURLより確定させて下さい。http://cgi.merumo.ne.jp/reader/subscribe2.do?i=GSRHFFVD [有効期限:2012/03/29 14:40]未登録のマガ…

現代住宅と京町家

先日、京都西陣にある、路地奥の住宅を改装する機会に恵まれた。昭和50年ごろに建設された木造2階建て住宅。吹き付け仕上げの外観にアルミサッシが取り付けられた、当時としてはごく一般的な分譲住宅であったと想像される。 「一文庵」と名付けられたこの住…